第21章

道中、藤本康弘は窓を開け、微風が頬を撫で、僅かな涼しさを運んでいた。

樋口浅子は窓辺に身を預け、外の景色を眺めていた。

藤本康弘はリラックスしている樋口浅子に一瞥をくれ、さりげなく探りを入れた。「この裕樹という男はどうなんだ?」

樋口浅子は少し考えてから、「いい人よ」と答えた。

「いい人?」藤本康弘は意味深げにその言葉を繰り返し、考え込むように樋口浅子を見た。

「うん」樋口浅子は頷いた。

裕樹は容姿も良く、体格も良い。時々一緒にいると、話し方や振る舞いも心地よかった。

相澤裕樹によく似ているのに、彼女に優しく、信頼してくれて、彼女が途方に暮れた時には後ろに立ってくれる。

まあ...

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